陸上養殖の課題をわかりやすく解説!導入前の必読ガイド

陸上養殖は自然の影響を受けにくいため、安定した生産につながりやすい一方で、設備の準備や運営には注意が必要です。

事前にどのような点に目を向けておくべきかを把握しておくことで、運営の不安を減らせます。

この記事では、陸上養殖の基本から課題、環境面でのメリットをわかりやすく紹介します。

これから陸上養殖を始める方や陸上養殖設備の導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

陸上養殖の基本メカニズムと特徴

陸上養殖施設の写真

陸上養殖は、自然の海や湖を使わず、陸上に設けた水槽や池で水産物を育てる方法です。

水温や酸素量、餌の量まで人の手で細かく管理できるため、魚が育つ環境を人工的に最適化しやすいのが特徴です。

大きく分けて「かけ流し式」と「閉鎖循環式」の2種類があり、かけ流し式は河川や海水を取り入れ、常に新しい水と入れ替えながら飼育します。

一方、閉鎖循環式は使った水を濾過装置で浄化し、再利用しながら育てる方式です。これにより、水資源の消費を大幅に抑えられます。

閉鎖循環式では、水槽内の排泄物や餌の残りを物理濾過・生物濾過などでしっかり除去し、再び水槽に戻します。

水質を安定させやすいため、魚種ごとに最適な条件を整えられ、生産量の安定にもつながる仕組みです。

また、外部から病原体が入りにくいことから病気の発生を抑えやすく、薬剤の使用を減らせるメリットも期待できます。

陸上養殖が注目されている背景

陸上養殖が注目を集めている背景には、環境の変化や資源の減少に対する危機感があります。

海の水産資源は乱獲や海洋環境の悪化によって年々減っており、将来的な食料供給に不安が広がっている状況です。

さらに、海水温の上昇といった気候変動の影響は、海面で行う従来の養殖にも大きなリスクを与えています。

こうした環境に左右されにくい点は、陸上養殖が評価されている大きな理由のひとつです。

また、陸上での養殖は生産拠点を自由に選びやすく、消費地の近くで育てることも可能です。

輸送距離が短くなるため、コストや環境負荷の軽減にもつながります。

天然の資源に依存しない生産体制を作れることから、持続可能な食料供給に向けた有力な選択肢として期待が高まっています。

陸上養殖が抱える課題とは

悩んでいる人

陸上養殖は、安定した生産が可能で環境にも配慮できる新しい養殖スタイルとして注目されています。

しかし、大きな可能性を秘めている一方で、導入や運営の段階ではいくつかの課題にも直面します。

初期費用の高さや設備トラブルのリスク、病気の広がりやすさに加え、自然災害への備えも求められるなど運営には幅広い視点での対策が欠かせません。

ここでは、陸上養殖を行ううえで押さえておくべき主な課題を紹介します。

初期投資・ランニングコストの問題

陸上養殖を始める際は、まず設備を導入するためには資金が必要です。

水槽・濾過装置・ポンプ・水温管理システムなどをそろえるには高額の初期投資がかかり、規模によっては数千万円〜数億円に達するケースもあります。

土地を所有していない場合は、用地取得費も発生します。

さらに運営が始まってからも、電気代・水道代・餌代などの維持費がかかるため、長期的な資金計画が欠かせません。

システムトラブルによるリスク管理

多くの機械やシステムが稼働している陸上養殖施設では、故障が大きなリスクになります

特に、循環装置や温度管理システムが止まった場合、短時間でも魚に深刻な影響が及ぶ可能性があります。

停電やトラブルに対応するには、設備の理解に加えて専門知識を持つスタッフが必要となるため、運営体制の整備も重要です。

病気発生リスクと感染拡大の懸念

閉鎖された施設で養殖を行う特性上、病気が発生すると短期間で広がりやすく、壊滅的な被害につながる恐れがあります。

魚種によっては使用できる医薬品が限られているため、衛生管理を徹底することが欠かせません。

また、異常を早く察知するための監視体制や日々のチェックも重要な対策となります。

自然災害で大きなダメージを受ける可能性

陸上養殖施設は、台風や豪雨などによる浸水・設備損壊・停電といった災害の影響を受けやすい側面もあります。

大規模災害時には電力復旧に時間がかかることもあるため、非常用発電機の導入や防災対策を事前に備えておくことが大切です。

陸上養殖が資源循環型社会に貢献する理由

陸上養殖設備の写真

陸上養殖には、魚を育てながら環境への負担を減らす工夫がいくつも取り入れられています

水の再利用や、天然資源に頼りすぎない飼料・種苗の活用など、持続可能な生産方法として発展しています。

また、生産地と消費地を近づける取り組みや海藻と魚を組み合わせて水質改善を図る複合養殖など、環境に配慮した取り組みも広がっている状況です。

ここでは、陸上養殖がどのように環境への負荷を抑え、資源の循環に役立っているのかをわかりやすく解説します。

地域完結型の食糧供給に貢献

陸上養殖は立地の自由度が高く、消費地に近い場所で生産しやすいのが特徴です。

生産と消費を同じ地域内で完結できれば、輸送距離を短縮でき、輸送に伴うCO₂排出などの環境負荷を抑えられます

環境への影響を抑えられる

閉鎖循環式の陸上養殖では、水を浄化して再利用するため、排水量が大幅に削減されます。

汚濁水の排出が少なくなることで、周辺環境への負担も小さくなり、環境保全につながります。

代替飼料の活用で資源への依存を減らす

従来の養殖では魚粉や大豆など、天然資源を原料とした飼料が多く使われており、乱獲や森林減少の原因につながってきました。

陸上養殖では、昆虫由来や植物由来などの代替飼料を導入しやすく、資源の再利用や廃棄物削減にも寄与します。

人工的な種苗生産による安定供給

一般的な養殖は自然環境で育った稚魚に依存することが多く、資源量の変動が生産にも影響します。

陸上養殖では、人工的に種苗を生産できるため、安定した供給を実現できます。

複合養殖システムによる水質負荷の軽減

魚の排泄物による水質悪化を防ぐために、魚介類と海藻を一緒に育てる「複合養殖」という方法が進められています。

魚が出す排泄物には栄養分が多く含まれており、それを海藻が吸収することで、水中の余分な栄養塩を減らすことが可能です。

この仕組みにより、排泄物が原因となる環境への負荷を小さくできると期待されています。

まとめ

陸上養殖は設備面・管理面での工夫が求められる一方で、水質管理のしやすさや環境負荷の軽減など、多くの可能性を持つ養殖方法です。

魚が育つ環境を安定させられることに加え、地域での生産や資源の循環にもつながるため、これからの水産業にとって重要な選択肢になりつつあります。

ただし、効果的に運用するためには施設の設計・設備の選定・運用計画など、専門的な知識が欠かせません。

適切なシステムを整えることで初めて、安全で持続的な養殖環境が実現します。

アクア丸善では、陸上養殖施設の設計・製造・施工を一貫して手掛けています。いけすの形状やサイズなど、お客様の施設環境に合わせた完全カスタマイズ設計が可能です。

また、耐久性・透明度・耐水性に優れたアクリルやFRPを使用しているため、長期間安定して使用できます。

これから陸上養殖に取り組みたい方や、施設づくりに不安がある方は、ぜひ一度アクア丸善へご相談ください。最適な環境づくりをお手伝いします。

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