陸上養殖を始める前に知っておきたい補助金制度と手続き
陸上養殖を始めたいと考えている方にとって、初期投資や設備費の負担は大きな課題です。
こうした課題を支援するために、国や地方自治体では、陸上養殖の導入や新規事業立ち上げを後押しする補助金制度が整備されています。
この記事では、補助金の種類や活用方法、申請の流れについてわかりやすく解説します。陸上養殖を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
陸上養殖の重要性と補助金の役割
陸上養殖は、環境への影響を抑えながら安定的に水産物を供給できる、これからの水産業に欠かせない取り組みです。
近年では、海洋資源の減少が進む中で、陸上での生産は持続可能な方法として注目を集めています。
また、補助金は初期投資や運営費の負担を和らげる重要な支援策であり、新たに参入する事業者にとって大きな後押しとなるでしょう。
こうした制度を活用することで、より多くの企業や個人が陸上養殖事業に挑戦しやすい環境が整いつつあります。
日本における陸上養殖の現状

全国の陸上養殖施設は、ここ数年でゆるやかに増加中です。水産庁の発表によると、令和7年1月の時点で届け出件数は740件に達し、特に沖縄県や九州エリアで多くの養殖場が確認されています。
養殖されている主な種類は、クビレズタ(海ぶどう)・ヒラメ・クルマエビが中心で、海水魚や海藻を陸上で育てる取り組みが全国的に広がりを見せています。
これまで養殖業が盛んでなかった地域でも新規参入が進み、現在ではサケやマスといった魚種の養殖件数も増加している状況です。
国が実施する補助金制度

国が実施する補助金制度は、農林水産業や地域の発展を支えるための公的な支援制度です。
事業者や自治体、研究機関などが新しい技術やビジネスに挑戦する際の負担を軽減し、持続的な成長を促す役割を担っています。
ここでは、その中でも代表的な仕組みや制度について紹介します。
養殖業成長産業化提案公募型実証事業
養殖業成長産業化提案公募型実証事業は、水産業の持続的な発展を目的に、養殖分野での新技術・新システムの導入や実証を支援する国の補助制度です。
これまでの「生産主導型」から「市場ニーズ主導型(マーケットイン型)」への転換を促し、競争力のある養殖業の確立を目指しています。
対象となる事業者
応募できるのは、法人格を持つ企業や団体・研究機関・自治体など幅広い事業者です。具体的には、次のような主体が対象となります。
- 民間企業・一般社団法人・一般財団法人・NPO法人・協同組合・養殖経営体又は養殖経営グループ
- 大学及び大学共同利用機関
- 国立研究開発法人・特殊法人及び認可法人
- 都道府県・市町村・公立試験研究機関及び地方独立行政法人
支援内容・補助率
採択された事業には、実証や技術開発にかかる経費の一部が補助されます。
- 補助率:事業費の最大1/2
- 上限金額:1件あたり最大5,000万円
- 支援対象期間:最長3年間(令和9年3月31日まで)
対象となる取り組み分野
この制度では、養殖業の課題解決や産業成長につながる幅広いテーマが対象です。主な例は以下のとおりです。
- 養殖製品の品質保持・管理に関する技術開発
- 気候変動等漁場環境変化に対応できる生産技術開発
- スマート水産業の推進に関する技術開発
- 新魚種・新養殖システムの推進に関する技術開発
- 養殖水産物の疾病関連対策に関する技術開発
- 配合飼料等の水産資材に関する技術開発
応募から採択までの流れ
応募から採択までの流れを詳しく解説します。
1.事業基本計画書の提出
応募者が事業基本計画書を作成し、事業実施機関に提出します。
2.事業本計画の認定
提出した書類をもとに技術開発部会で審査を行い、認定された事業者には、事業実施者として「認定通知書」が発行されます。
3.実施計画申請と承認
認定を受けた事業基本計画に基づき、実際の実施期間や進行スケジュールを明記した実施計画申請書を提出します。
その後、マリノフォーラム21が内容を確認し、問題がなければ承認通知書が発行されます。
4.助成金交付計画申請
助成金の交付時期や金額に関する助成金交付申請計画書を提出します。助成金の支払いは、原則として事業終了後の精算払いです。
5.交付決定通知・事業開始
マリノフォーラム21による内容確認後、助成金交付決定通知書が発行されます。この通知書に記載された事業開始日以降から、助成金の利用が可能です。
なお、開始日より前に行った購入や契約は助成の対象外になるため、注意が必要です。
6.実施状況の報告
事業開始日から1年ごとに、助成金の使用状況や事業の進捗内容について報告します。
提出された報告書はマリノフォーラム21を通じて水産庁に送付され、技術開発部会の評価結果によっては、事業期間の短縮が求められる場合があります。
また、必要に応じて技術開発部会から指導や助言が行われることもあります。
7.実証結果の報告
最長3年間の事業期間が終了した後、助成金の使用状況や事業の成果などについて、履行検査が実施されます。
その際、実証結果報告書や事業実績報告書・ポンチ絵・成果概要などの提出が必要です。
提出した事業成果は、マリノフォーラム21を通じて水産庁へ報告されます。
8.助成金確定・精算
履行検査で問題がなければ、助成金精算報告書を提出した後に、助成金額の確定通知が発行されます。
確定した金額に基づき、助成金の精算払い又は返還手続きを行います。
地方自治体の補助金制度

国の補助金だけでなく、地方自治体でも陸上養殖の起業や設備導入を支援するための補助金制度が整備されています。
この制度は、地域の特性や産業構造に合わせて設計されており、地域経済の活性化や新たな雇用の創出を目的としたものです。
たとえば、宮城県石巻市では「陸上養殖システム導入支援事業」を実施しており、環境変化に対応するために陸上養殖システムを導入する事業者へ設備費の一部を補助しています。
補助率は事業費の1/2以内、上限は1事業者あたり年間300万円で、最長3年間の継続支援を受けることが可能です。
補助金制度の有無は自治体によって異なるため、陸上養殖を検討している方は、お住まいの自治体の農林水産課や産業振興課などへ直接確認してみてください。
まとめ
陸上養殖は、環境変化の影響を受けにくく、安定した生産を可能にする次世代の水産業として注目されています。
国や自治体の補助金制度を活用すれば、初期投資や設備導入の負担を軽減し、スムーズに事業をスタートできます。
制度の内容は地域によって異なるため、まずは最新情報を確認し、自分の計画に合った支援を見つけることが大切です。
補助金を効果的に活用するためには、実際の設備計画やシステム設計の段階から専門的なサポートを受けることが欠かせません。
そうした技術面での支援を行っているのが、陸上養殖設備を手掛ける株式会社アクア丸善です。
陸上養殖設備の設計・製造・施工を行う株式会社アクア丸善では、40年以上にわたり培ってきた技術力をもとに、目的や環境条件に合わせた最適な養殖システムを提案しています。
耐久性・耐水性に優れたアクリルやFRPを使用した陸上養殖設備を、設計から施工まで一貫して対応しています。
いけすの形状やサイズ、付随設備の設置など、お客様のご要望に合わせたオーダーメイド設計が可能です。
陸上養殖を検討している方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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